YMO世代の気持ち -ノベル館-

YMO世代の気持ちのサブブログです。

プロモーション小説-水曜日を待つ人たち-

水曜日を待つ人たち -第3話「物語の届く場所」-

三月二十五日、水曜日。 田中誠一が出版社に入ったのは、バブルが弾ける少し前のことだった。以来、本を作り続けてきた。装丁の手触り、紙の匂い、校正刷りの朱字——それが誠一にとっての「仕事」だった。 来月から、管理部門への異動が決まっている。 年齢的…

水曜日を待つ人たち -第2話「道の分かれ目」-

三月十八日、水曜日。 松本颯太の机の引き出しには、進路調査票がまだ入っていた。記入期限は今週の金曜日。クラスの半分はもう提出したらしい。 隣の席の奥田は「東京の大学」と言った。窓際の西島は「公務員試験」と言った。みんなすでに答えを持っている…

水曜日を待つ人たち -第1話「立ち止まる理由」-

三月十一日、水曜日。 午後七時を過ぎたオフィスで、芹沢明日香はまだ画面を見つめていた。 「企画書(修正版・第三稿)」というファイル名が、今日三度目の会議での言葉を思い出させる。「コンセプトが弱い」「もう一回考えてきて」——上司の言葉は短かった…