YMO世代の気持ち -ノベル館-

YMO世代の気持ちのサブブログです。

第17話「一念天に通ず」

1. 七夕の準備

七月七日。

学校に、七夕の飾りが並んだ。

「先生、短冊書いてください!」

生徒たちが、色とりどりの短冊を持ってきた。

「いいよ。何色にしようかな」
「先生は、ピンクがいいと思います!」
「じゃあ、ピンクで」

短冊を受け取った。

教室の入り口に、大きな笹が飾ってある。
廊下にも、あちこちに笹と短冊。

七夕の雰囲気、いいな。

2. 生徒たちの願い事

生徒たちが、短冊を書いてる。

「何書こうかな」
「高校受かりますように、だよね」
「え、それ普通すぎない?」
「じゃあ、彼女できますように、とか」
「お前、相手いるの?」
「いない!」

笑い声が響く。

私も、短冊を書こうとペンを持った。

何を書こうかな。

「生徒たちが幸せになりますように」

そう書いて、笹に飾った。

3. 蓮くんの願い事

蓮くんが、短冊を書いてるのを見かけた。

真剣な顔。
何を書いてるんだろう。

「蓮くん、何書いたの?」
「あ、先生...」

蓮くんが、少し照れた顔をした。

「見てもいい?」
「...恥ずかしいですけど」

蓮くんが、短冊を見せてくれた。

「家族が幸せになりますように」

たった一行。
でも、蓮くんらしい願い事だった。

「いい願い事だね」
「先生も、何か書いたんですか?」
「うん。生徒たちが幸せになりますように、って」
「似てますね」
「うん。そうだね」

蓮くんが、笹に短冊を飾った。

4. 南雲くんの態度

南雲くんを探した。

屋上にいた。いつもの場所。

「南雲くん、短冊書かないの?」
「書かない」
「どうして?」
「願い事なんて、叶わないから」

南雲くんが、空を見上げた。

「織姫と彦星の話、知ってるか」
「うん」
「年に一度しか会えないんだろ。かわいそう」
「そうだね」
「俺なら、会いに行く。待たない」

南雲くんらしい考え方だな。

「でも、願い事くらい書いてもいいんじゃない?」
「...」
「叶うか叶わないかじゃなくて、何を願うかが大事だと思う」
「...」

南雲くんが、少し考えてる顔をした。

5. 岩崎先生の言葉

職員室で、岩崎先生と話した。

「七夕か」
「はい。生徒たち、楽しそうです」
「そうか」

岩崎先生が、窓の外を見た。

「『一念天に通ず』という言葉がある」
「はい」
「強い思いは、天に届く。七夕の願い事も同じだ」
「...」
「願いを書くことで、自分の思いを確認する。それが大事だ」

岩崎先生の言葉に、頷いた。

「先生も、短冊書きますか?」 「くだらん」

岩崎先生が、そう言って去っていった。

...でも、後で笹の近くにいるのを見かけた。 こっそり書いたのかな。

教室に戻ると、生徒たちが短冊を書いてた。

「先生も何か書いてくださいよ」 「さっき書いたよ」 「え、何て書いたんですか?」 「『生徒たちが幸せになりますように』って」 「えー、先生優しい!」

生徒たちが、嬉しそうな顔をした。

「ねえ先生、『一念天に通ず』って英語で何て言うんですか?」 「えーと...One wish reaches the heaven...?いや、ちょっと違うな」

つい、考え込んでしまった。

「先生、何ブツブツ言ってるんですか」 「あ、ごめん。ことわざを英語にしようとしてた」 「それ、癖ですか?」 「うん、帰国子女の癖」

生徒たちが笑った。

「先生、面白い」 「面白くないって」

でも、この癖、なかなか抜けないんだよな。

6. 願い事を見る

放課後、笹に飾られた短冊を見て回った。

「高校受かりますように」
「彼女ができますように」
「背が伸びますように」
「お金持ちになりたい」

いろんな願い事がある。

「サラ先生と結婚したい」

...え。

小さい字で書いてある。
誰だろう。名前がない。

ちょっと恥ずかしい。
でも、微笑ましい。

田村くんかな。恋する男子。
彼なら、書きそう。

7. 南雲くんの短冊

笹の奥の方に、見慣れた字の短冊があった。

「南雲...」

さっき、書かないって言ってたのに。

短冊を見た。

「早く一人前になりたい」

南雲くんらしくない、真面目な願い事。

セキュリティの仕事のことかな。 前に「高校は行かないかも」って言ってたし、本当に就職するつもりなのかもしれない。

あの子も、自分の道を考えてるんだ。

8. 七夕の夜

夜、アパートの窓から空を見上げた。

曇ってる。
星が見えない。

「織姫と彦星、今年は会えないかな」

少し残念。

でも、願い事は書いた。
生徒たちの願いも、笹に飾った。

一念天に通ず。
強い思いは、天に届く。

蓮くんの願い。家族が幸せになりますように。
南雲くんの願い。早く一人前になりたい。
みんなの願い。

全部叶うといいな。

9. エミリーへのメッセージ

エミリーにメッセージを送った。

『Today is Tanabata in Japan.』

すぐに返事が来た。

『What's Tanabata?』

『Star Festival. We write wishes on paper strips.』

『What did you wish for?』

『For my students to be happy.』

『That's so like you, Misaki.』

『What about you? Any wishes?』

『I wish I could visit Japan soon.』

『I hope so too!』

エミリーに会いたいな。
夏休み、来てくれるって言ってたっけ。

10. 蓮くんの背景

ベッドに横になって、蓮くんのことを考えた。

「家族が幸せになりますように」

あの短冊。

蓮くんの家庭は、経済的に厳しい。
父親は非正規、母親はパート掛け持ち。
妹の咲良ちゃんがいる。

蓮くんは、いつも笑ってる。
でも、本当は大変なんだ。

家族のために、何かしたいと思ってる。
だから、勉強を頑張ってる。

「家族が幸せになりますように」

その願いが叶うように、私にできることは何だろう。

今は、見守ることしかできない。
でも、いつか何かできるかもしれない。

11. 一年生との交流

次の日、一年生のクラスを通りかかった。

「サラ先生!」

声をかけられた。

「おはよう」
「先生、七夕の短冊見ました?」
「うん。みんなの願い事、素敵だったね」
「先生も書いたんですか?」
「うん。生徒たちが幸せになりますように、って」
「えー、先生優しい!」

一年生の子たちが、嬉しそうに笑った。

「先生の願い、叶いますよ!」
「そうかな」
「はい!私たち、幸せですから!」

その言葉に、胸が温かくなった。

12. 一念天に通ず

放課後、教室の窓から空を見た。

今日は晴れてる。
夕方になれば、星が見えるかもしれない。

一念天に通ず。

強い思いは、天に届く。

蓮くんの思い。南雲くんの思い。
生徒たち一人一人の思い。

全部、天に届けばいいな。

私の願いは、生徒たちが幸せになること。
その願いが叶うように、私は頑張ろう。

教師として、できることをやろう。

笹の短冊が、風に揺れてる。
夏の風が、心地いい。

もうすぐ夏休み。
一学期も、終わりが近い。

いろんなことがあったけど、ここまで来れた。

これからも、一歩ずつ進んでいこう。

生徒たちと一緒に。


次回「終わり良ければ全て良し」は2026年7月22日(水)公開予定です。