1. 終業式
七月二十日。
一学期の終業式。
体育館に、全校生徒が集まってる。
暑い。扇風機が回ってるけど、あまり涼しくない。
「これにて、一学期を終了します」
大村校長の挨拶が終わった。
「夏休み、事故のないように。二学期、元気に会いましょう」
生徒たちから、小さな歓声が上がった。
夏休みを楽しみにしてる顔、たくさんある。
2. 通知表
教室に戻って、通知表を渡した。
「一人ずつ呼んでいくね」
担任の岩崎先生と一緒に、生徒を呼んで通知表を渡す。
私は、英語の成績コメントを書いた。
「難波蓮くん」
「はい」
蓮くんが前に来た。
岩崎先生が通知表を渡す。
「良い成績だ。この調子で続けろ」
「はい。ありがとうございます」
蓮くんが、通知表を受け取った。
少しだけ、嬉しそうな顔。
私のコメント欄には、「英語の理解力が高く、努力を続けている。今後の成長が楽しみ」と書いた。
3. 生徒たちの反応
通知表を受け取った生徒たちが、それぞれの反応を見せてる。
「やった、思ったより良かった!」
「うわ、ここ下がってる...」
「英語、瀬良先生のおかげで上がった!」
私の名前が出て、少し嬉しくなった。
佐藤さんも、通知表を受け取った。
少しほっとした顔。
出席日数のことが気になってただろうけど、なんとか乗り越えられた。
高橋さんも、静かに受け取った。
二人の距離は、まだある。
でも、少しずつ近づいてきてると思う。
4. 南雲くんの通知表
南雲くんが、通知表を受け取った。
「南雲、成績は良いが、出席日数が足りない」
岩崎先生が言った。
「二学期は、もう少し授業に出ろ」
「はい」
南雲くんが、あっさり返事した。
本当に出る気あるのかな。
「先生、俺は大丈夫ですから」
「何がだ」
「授業に出なくても、テストで点取ってるでしょ」
「そういう問題じゃない」
「...」
岩崎先生と南雲くんのやり取り。
いつものことだけど、少し心配になる。
でも、南雲くんには南雲くんの道があるんだろう。
5. 夏休みの予定
通知表を渡し終わって、生徒たちに夏休みの予定を聞いた。
「みんな、夏休みは何するの?」
「海行きます!」
「おばあちゃんの家に行く」
「塾の夏期講習...」
「ゲームしまくる!」
いろんな声が飛び交う。
「蓮くんは?」
「...特に予定ないです」
蓮くんが、少し言いにくそうに答えた。
「そっか。ゆっくり休んでね」
「はい」
蓮くんの表情が、少し曇った。
何か事情があるのかな。
「南雲くんは?」
「俺はセキュリティコンテストに出る」
「セキュリティコンテスト?」
「オンラインのやつ。ハッカーの大会みたいな」
「へえ、すごいね」
「別に」
南雲くんが、あっさり言った。
6. 職員室にて
放課後、職員室で一学期を振り返った。
「瀬良先生、一学期お疲れ様」
山田先生が声をかけてくれた。
「ありがとうございます。あっという間でした」
「大変なこともあったでしょ」
「はい。SNSいじめとか...」
「乗り越えられたね」
「みなさんのおかげです」
山田先生が笑った。
「瀬良先生、成長したね」
「え、そうですか?」
「最初の頃より、落ち着いた感じがする」
「...」
「生徒との距離感も、良くなってきたと思うよ」
山田先生の言葉が、嬉しかった。
7. 岩崎先生の評価
岩崎先生が、私のところに来た。
「瀬良先生」
「はい」
「一学期、よくやった」
「...え」
岩崎先生から褒められるとは思わなかった。
「まだ足りないことは多い。だが、成長は見える」
「ありがとうございます」
「『終わり良ければ全て良し』という言葉がある」
「はい」
「一学期の終わりに、生徒たちが笑顔でいる。それが全てだ」
岩崎先生が、少しだけ笑った。
「二学期も、頑張れ」
「はい」
岩崎先生が去っていった。
終わり良ければ全て良し。
いろんなことがあったけど、一学期を無事に終えられた。
それが、大事なんだ。
8. 大村校長との会話
廊下で、大村校長に会った。
「おっ、瀬良先生。一学期お疲れ様」
「ありがとうございます」
「夏休み、何するの?」
「実家に帰ったり、ゆっくりしたり...」
「いいね。リフレッシュしてきな」
校長先生が笑った。
「瀬良先生、若いから回復も早いだろうけど、無理しないようにね」
「はい」
「教師は体が資本だからね。健康第一」
...今日は、普通のことしか言わないな。
珍しい。
「あ、そうだ。瀬良先生、彼氏はできた?」
やっぱり来た。
「いえ、まだです」
「夏は出会いの季節だからね〜。頑張ってね〜」
校長先生が、笑いながら去っていった。
...やっぱり、いつもの校長先生だった。
9. 帰り支度
帰り支度をしていると、蓮くんが教室にいるのが見えた。
「蓮くん、まだ帰らないの?」
「はい。少し片付けを」
蓮くんが、教室の机を整理してる。
「手伝おうか」
「いえ、大丈夫です」
蓮くんが、黙々と片付けてる。
「蓮くん、夏休み、本当に予定ないの?」
「...」
「無理に聞かないけど」
「少し、家の手伝いをします」
「そっか」
「あと、妹の面倒を見たり」
「咲良ちゃんだよね」
「はい」
蓮くんが、少し笑った。
「咲良は、元気ですよ。先生のこと、覚えてます」
「本当?嬉しいな」
「サラ先生、可愛いって言ってました」
「え、そうなの?」
少し照れた。
「夏休み、元気でね」
「先生も」
蓮くんが、頭を下げた。
10. 商店街で
帰り道、商店街を通った。
「先生、夏休みなんだって?」
やおふくのおばちゃんが声をかけてきた。
「はい。今日で一学期終わりです」
「お疲れ様。ゆっくり休みな」
「ありがとうございます」
おばちゃんが、スイカをくれた。
「夏はスイカだよ。水分補給」
「いいんですか?」
「いいのいいの。頑張ったご褒美」
おばちゃんの優しさが、染みる。
「先生、なんか変わったね」
「え?」
「前より、しっかりした感じ。先生らしくなってきた」
「そうですか...」
「学校で何かあったの?」
「いろいろありました。でも、乗り越えられました」
「そっか。良かったね」
おばちゃんが笑った。
11. エミリーとの通話
夜、エミリーとビデオ通話した。
「First semester done! Congratulations!」 「ありがとう。あっという間だった」 「Was it hard?」 「うん。いろいろあった」 「But you made it through, right?」 「うん。みんなのおかげで」
エミリーが笑った。
「Misaki, you've grown.」 「そう?」 「You seem more confident than before.」 「...そうかな」 「Yeah. Your voice sounds different.」
エミリーの言葉で、気づいた。
四月から三ヶ月。
いろんなことがあった。
失敗もした。悩みもした。
でも、少しずつ前に進んでる。
12. 一学期を振り返って
ベッドに横になって、天井を見上げた。
一学期が終わった。
四月、新任教師として着任した。
緊張と不安でいっぱいだった。
五月、修学旅行で生徒たちと仲良くなった。
「サラ先生」と呼ばれるようになった。
六月、SNSいじめに直面した。
辛かったけど、乗り越えられた。
七月、期末テストと七夕と終業式。
生徒たちの成長を見ることができた。
終わり良ければ全て良し。
いろんなことがあったけど、一学期を無事に終えられた。
生徒たちが笑顔で夏休みに入れた。
それが、一番大事なこと。
明日から夏休み。
少しゆっくりして、二学期に備えよう。
目を閉じた。
一学期、お疲れ様。
自分に、そう言ってあげよう。
次回「蒔かぬ種は生えぬ」は2026年7月29日(水)公開予定です。