YMO世代の気持ち -ノベル館-

YMO世代の気持ちのサブブログです。

第23話「去る者は日々に疎し」

1. 夏休み最終週

八月下旬。

夏休みも、あと一週間で終わり。

学校に行くと、ちらほら生徒の姿がある。
部活や、宿題の相談で来てる子たち。

「おはようございます、サラ先生!」
「おはよう。宿題終わった?」
「全然終わってないです...」

やっぱり、そういう子多いよな。

2. 宿題が終わってない生徒たち

職員室に、三年二組の生徒が何人か来た。

「先生、英語の宿題教えてください!」
「夏休みの課題、難しくて...」

見ると、ほとんど白紙のプリント。

「これ、夏休み中にやるはずだったよね」
「はい...」
「なんで今になって?」
「遊んでました...」

正直だな。

「まあいいや。一緒にやろう」

生徒たちに、宿題を教えた。

3. 蓮くんの場合

蓮くんも、学校に来てた。

「蓮くん、宿題は終わった?」
「はい。全部終わってます」
「さすがだね」
「時間があったので」

蓮くんが、少し照れた。

「先生、二学期もよろしくお願いします」
「こちらこそ。夏休み、どうだった?」
「子ども食堂で手伝いしてました。あと、勉強も」
「充実してたんだね」
「はい」

蓮くんが、少し笑った。

「先生も、実家に帰ったんですか?」
「うん。お盆に」
「良かったですね」
「うん。リフレッシュできた」

4. 南雲くんの報告

廊下で、珍しく南雲くんに会った。

「南雲くん、学校来てたんだ」
「ああ、ちょっと用事で」
「セキュリティコンテスト、どうだった?」
「優勝した」
「え、優勝!?」

南雲くんが、あっさり言った。

「すごいじゃん!」
「別に。いつものことだから」
「いや、すごいよ」

南雲くんが、少しだけ照れた顔をした。

「で、企業からスカウトが来てる」
「スカウト?」
「セキュリティベンチャー。中卒でもいいから来いって」
「...」
「まだ決めてないけど」

南雲くんの将来。
普通とは違う道を歩いてる。

5. 久しぶりの再会

教室を覗くと、生徒たちがいた。

久しぶりに会う顔。
日焼けしてる子、髪を切った子、背が伸びた子。

「先生、久しぶり!」
「元気だった?」
「はい!海行きました!」
「おばあちゃんの家に行った!」
「俺は家でゲームしてた!」

みんな、いろんな夏を過ごしたんだな。

佐藤さんも、元気そう。
高橋さんとは、まだ距離があるけど、前よりはまし。

「みんな、二学期も頑張ろうね」
「はーい!」

6. 岩崎先生との会話

職員室で、岩崎先生と話した。

「瀬良先生、帰省したか」
「はい。お盆に」
「リフレッシュできたか」
「はい。充電できました」

岩崎先生が、窓の外を見た。

「『去る者は日々に疎し』という言葉がある」
「はい」
「離れていると、疎遠になる。夏休みは、生徒と離れる時期だ」
「...」
「だが、離れていても、心は繋がっている。そういう関係を築け」

岩崎先生の言葉に、頷いた。

「二学期も、頑張ります」
「ああ。期待している」

7. 山田先生との会話

山田先生も、久しぶりに会った。

「瀬良先生、元気そうね」
「はい。山田先生も」
「夏休み、どうだった?」
「実家に帰って、子ども食堂のボランティアして」
「子ども食堂?」
「はい。生徒の難波くんが手伝ってて」
「ああ、難波くんね。いい子よね」

山田先生が、コーヒーを飲んだ。

「二学期は、文化祭があるわよ」
「そうですね」
「忙しくなるわよ。覚悟してね」
「はい」

文化祭。楽しみだな。

8. エミリーとのビデオ通話

夜、エミリーからビデオ通話がかかってきた。

「Misaki!」 「Emily! 久しぶり」

画面越しのエミリー。 シアトルは朝らしい。コーヒーを持ってる。

「I'm coming to Japan next week!」 「本当?嬉しい!」 「I want to see your school. And your students.」 「もちろん。案内するよ」

エミリーが嬉しそうに笑った。

「So, how's teaching going?」

エミリーの質問に、少し考えた。

「...正直に言うと、難しい」 「What's wrong?」

言葉を選びながら、話し始めた。

「気になる生徒がいるの。経済的に苦しい家庭の子で、塾にも行けない。でも、すごく頑張ってる」 「Ren-kun?」 「覚えてるの?」 「You told me about him before. The smart one.」

蓮くんのこと、前に話したんだった。

「彼、将来どうするか悩んでて。高校に行くお金があるかも分からない」 「That's tough.」 「それと、もう一人。高校に行かないかもって言ってる子がいて」 「Why not?」 「自分には必要ないって。ITがすごく得意で、学校の勉強は退屈だって」

エミリーが頷いた。

「In America, that's not so unusual.」 「え?」 「Some kids skip college and start working. Especially in tech. If they have skills, companies hire them.」 「そうなの?」 「Yeah. Bill Gates, Steve Jobs... they dropped out. Of course, most people aren't them. But the point is, there are different paths.」

エミリーの言葉に、少し驚いた。

「日本では、高校に行かないって言うと、みんな心配する」 「Japan is more... linear? One path for everyone.」 「そうかも」 「But Misaki, you're different. You lived in Seattle. You know there are other ways.」

エミリーがコーヒーを飲んだ。

「What does your mentor say? The strict one.」 「岩崎先生?」 「Yeah.」 「...あの人、何を考えてるか分からない。厳しいし、あまり褒めてくれない」 「But?」 「でも、生徒のことはちゃんと見てる気がする」

エミリーが微笑んだ。

「Sounds like a good teacher.」 「私は、まだ全然ダメ」 「Misaki.」 「うん?」 「You care about your students. That's the most important thing. The rest, you'll learn.」

エミリーの言葉が、心に沁みた。

「...ありがとう」 「That's what friends are for. I'll see you next week, okay?」 「うん。楽しみにしてる」 「Me too. Love you, Misaki.」 「Love you too, Emily.」

通話が終わった。

シアトル時代からの親友。 離れていても、心は繋がってる。

去る者は日々に疎し。 でも、本当の友達は、離れていても疎遠にならない。

エミリーと話して、少し気持ちが楽になった。

9. 二学期への準備

次の日、二学期の準備を始めた。

授業計画の確認。
教材の準備。
クラスの状況の確認。

やることがたくさんある。

「瀬良先生、忙しそうね」

山田先生が声をかけてきた。

「はい。二学期の準備を」
「真面目ね」
「当たり前です」

山田先生が笑った。

「そういうところ、いいわね」
「え?」
「真面目で、一生懸命で。生徒たちも、きっと見てるわよ」
「...ありがとうございます」

10. 最後の部活

夏休み最後の部活指導。

英語部の活動。

「先生、夏休み楽しかったです」
「良かった。二学期も頑張ろうね」
「はい!」

部員たちが、元気に活動してる。

夏休みの思い出を、英語で発表する活動をした。

「I went to the beach with my family.」
「I visited my grandparents' house.」

みんな、いろんな思い出がある。

「先生の夏休みは?」

部員に聞かれた。

「I went to my parents' house. And I volunteered at a children's cafeteria.」
「Children's cafeteria?」
「子ども食堂のこと」
「へえ、すごい」

夏休みの経験を、英語で共有する。
これも、いい学びだな。

11. 夏の終わり

学校からの帰り道。

夕焼けが、綺麗だった。

夏休みが、終わる。
長いようで、短かった。

いろんなことがあった。

部活の手伝い。
子ども食堂のボランティア。
実家への帰省。
エミリーとの通話。

全部、良い経験だった。

去る者は日々に疎し。

夏休み中、生徒たちと離れていた。
でも、心は繋がっていたと思う。

二学期、また会える。
みんなの成長を、見届けられる。

12. 新学期へ

アパートに帰って、窓を開けた。

夏の終わりの風。
少しだけ、涼しくなってきた。

明日から、二学期。

文化祭がある。
体育祭がある。
進路の話も、本格的になってくる。

忙しくなるけど、楽しみだ。

蓮くんは、どんな進路を選ぶんだろう。
南雲くんは、本当に中卒で就職するのかな。
佐藤さんは、元気になってるかな。

みんなのこと、見守っていこう。

去る者は日々に疎し。 でも、離れていても、心は繋がっている。

その絆を大事にして、二学期も頑張ろう。

明日の準備をしよう。

教科書とノートをカバンに入れる。 新しいペンも、買っておいた。

二学期の最初の授業、何を話そうかな。

夏休みの思い出話でもしようか。 生徒たちは、どんな夏を過ごしたんだろう。

楽しみだな。

明日から、また新しい日々が始まる。


次回「心機一転」は2026年9月2日(水)公開予定です。