みどりの日。街には「自然に親しみ、その恩恵に感謝し、豊かな心を育む」という目的を果たすべく、多くの人々が公園や森へと繰り出していく。
けれど、都心の公園に植えられた、整然と並ぶ「管理された緑」を見ていると、感謝よりも先に、どこか居心地の悪さを感じてしまう。
雑草は抜かれ、枝は刈り取られ、害虫は駆除される。
人間に都合の良い姿に整えられた自然。それは、果たして「豊かな心」を育む本物の緑なのだろうか。
「湊くん、そんなに真面目な顔して芝生を見つめないで。ピクニックに来たんだから、もっとこう、無邪気に楽しみなさいよ」
透子が、デパ地下で買ってきた少し高いサンドイッチを広げながら言った。
「……透子。この芝生が、本当はもっと自由に、不規則に生えたいと思っているんじゃないかって、考えたりしない?」
「しないわよ。自由に生えさせた結果、足元がドロドロになったら、誰もここに来なくなるでしょ。私たちは『コントロールされた安全な自然』を消費しに来てるの。それが今の時代の『癒やし』の正体よ」
彼女は容赦なく正解を突きつけてくる。
僕たちは、自分たちの手に負えないものを排除し、理解できる形に加工してからでなければ、愛することができないのかもしれない。
公園の隅で、一本だけ剪定(せんてい)を免れたのか、奔放に枝を伸ばした木があった。その不揃いな姿は、美しく整えられた他の木々の中で、ひどく浮いて見えた。
「私は、あの木の方が好きだな」
意外なことに、透子がサンドイッチの最後の一口を飲み込みながら、その歪な木を指差した。
「……どうして?」
「だって、誰にも媚びてない感じがするじゃない。私も、いつかあんな風に、会社のルールからはみ出して立ってみたいわ」
五月の風が、彼女の髪を揺らした。
管理された緑の中で、僕たちは自分の中にある「制御不能な野生」を、密かに探し続けていた。