YMO世代の気持ち -ノベル館-

YMO世代の気持ちのサブブログです。

第75話:日曜日の予感、沈黙の電話

日曜日の夕暮れ。図書室の電話が、閉館間際に鳴り響いた。
 ディスプレイに表示されたのは、登録のない番号。けれど、僕はなぜか、その予感に胸が騒いだ。

「……はい、シェア・ライブラリーの湊です」
 受話器の向こうからは、雨音に混ざって、微かな、しかし規則的な「呼吸」の音が聞こえた。
「……凑さん。あなたの決意は、本物ですか?」

 低くて、感情を抑えた声。それは、あのピンク色の付箋の主を連想させた。
「……どちら様ですか?」
「私は、ただの観測者です。ですが、あなたが動けば、止まっていた水脈も動き出します。……気をつけて。綺麗な言葉は、時として本物の記憶を、より深く埋め殺してしまいますから」

 電話は、一方的に切れた。
 ツーツーという無機質な音が、静まり返った館内に響く。
 外に出ると、透子が駅の方から歩いてくるのが見えた。彼女の足取りは力強い。けれど、今さっきの電話の声が、僕の胸に冷たい棘を残していた。

 「綺麗な言葉は、記憶を埋め殺す」。
 それは、透子が今やろうとしていることへの、警告なのだろうか。
 信号が赤に変わる。
 僕は傘を差し、彼女を迎えるために歩き出した。
 新しい一週間が、すぐそこまで迫っていた。