月曜日。
いよいよ明日が約束の日だ。
図書室は定休日だが、僕は落ち着かずに書庫の整理をしていた。手は動いているけれど、心はここにあらずだ。
夕方、透子が早めの夕食を作ってくれた。
明日に備えて消化の良いものを、とリクエストしたら、優しい味の鶏雑炊が出てきた。
「……震えてる?」
スプーンを運ぶ僕の手を見て、透子が静かに尋ねる。
「正直、怖いよ。潮里が誰なのかもわからないし、その先に何が待っているのかも」
「怖くて当たり前よ。怖くない人間なんて、信用できないもの」
透子はテーブル越しに僕の手を握った。彼女の手のひらは温かく、そして力強かった。
「でもね、新月っていうのは『始まり』の月なの。闇が一番深いってことは、これ以上暗くならないってこと。あとは光が満ちていくだけ」
「……ポジティブだね」
「現実主義者はね、いつだって最悪の状況の中に希望の計算式を見つけるのよ」
窓の外、空には細く欠けた月すら見当たらない。
街の灯りが、いつもより眩しく、そして人工的に見えた。
明日の夜、僕たちはこの人工の光の外側へ踏み出す。