YMO世代の気持ち -ノベル館-

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第107話:時限爆弾を抱えて

木曜日。図書室の金庫の中に、あの「赤い図面」が眠っている。
 それはまるで、時限爆弾のようだった。
 これを公表すれば、間違いなく工事は止まる。しかし、それと同時に、潮里さんの身元が割れ、彼女の平穏な生活は破壊されるだろう。
 さらに、すでにマンションを購入予約している人々や、補償金を当てにしている住民たちの怒りも爆発する。

 真実は、人を救うとは限らない。時には、多くの人の夢を殺す刃になる。
 その重みが、僕の胃をキリキリと締め上げた。

「……顔色が悪いわよ、湊くん」
 透子が心配そうにアイスコーヒーを差し出す。
「正義の味方になるって、もっとスカッとするもんだと思ってた?」
「ああ。……こんなに苦い味がするとは思わなかったよ」

 僕は窓の外を見る。
 建設予定地には、巨大なクレーンが空を突き刺すように立っている。あそこで働く人々にも家族がいる。生活がある。
 僕が引こうとしている引き金は、彼らの生活をも撃ち抜くのだ。

「でもね」透子が呟く。「嘘の上に建てた城は、いつか必ず崩れる。その時、下敷きになる人を減らすのが、今の私たちにできる唯一のことじゃない?」

 信号は赤。
 まだ渡れない。渡ってはいけない。
 僕たちは、手に入れた真実をどう使うべきか、その「覚悟」を試されていた。
 ただ闇雲に叫ぶのではなく、最も効果的に、そして被害を最小限にするための戦略が必要だ。
 白の糸(敵)は巨大だが、その足元には確実に亀裂が入っている。