日曜日。閉館後、日が傾き始めた時刻を見計らって、僕と透子は再開発エリアのフェンス沿いを歩いた。
工事は日曜だというのに止まっていない。突貫工事で遅れを取り戻そうとしているのだろう。
「……聞こえる?」
透子が足を止めた。
工事現場の轟音の合間に、ブオォォォ、という低いモーター音が絶え間なく響いている。
「排水ポンプの音だね」
「それも、すごい数よ。通常の基礎工事じゃありえない規模だわ」
フェンスの隙間から中を覗く。
太いパイプが何本も地面から伸び、泥水のようなものを激しく汲み上げているのが見えた。
潮里さんの図面にあった「地下水脈」のラインと、ポンプの位置が完全に一致している。
「やっぱりだ。彼らは水脈を切断して、無理やり水を抜いている」
僕はフェンスを掴む手に力を込めた。
「こんなことを続ければ、周辺の地盤はスカスカになる。この図書室だって、いつ傾いてもおかしくない」
大地が悲鳴を上げている。
その水を、彼らはただの「邪魔な泥水」として捨てているのだ。この街を百年支えてきた水を。
「……動画、撮ったわ」
透子がスマートフォンをポケットにしまう。
「あの図面が『予言書』だとするなら、このポンプの音は『予言が的中している証拠』よ。明日、専門家に見せに行きましょう」
夕焼けが、工事現場のクレーンを赤黒く染めていく。
その色は、まるで傷口から流れる血のように見えた。
僕たちは無言で頷き合い、その場を後にした。