YMO世代の気持ち -ノベル館-

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第124話:日曜日の陽炎、動かない時計

日曜日。
 気晴らしに外の空気を吸おうと庭に出たが、それは間違いだった。熱風がドライヤーのように吹き付け、呼吸をするだけで肺が熱くなる。

 フェンスの向こう、建設現場のクレーンがゆっくりと旋回しているのが見えた。
 彼らは日曜日も休まない。工期を短縮し、既成事実を積み上げるために、猛スピードで「未来」を組み立てている。

「湊さん、こんにちは。……顔色が優れませんね」
 声をかけてきたのは、常連の松代さんだった。彼女は日傘をさし、心配そうにこちらを見ている。
「この暑さですからね。松代さんも気をつけて」
「ええ。でもね、湊さん」
 彼女は少し声を潜めた。
「最近、夜中に地面から変な音がするのよ。ズズズッて、腹の底に響くような。……私の気のせいかしら?」

 ドキリとした。
 それは気のせいではない。地盤が沈下し、歪みが生じている音だ。住民たちの肌感覚は、機械よりも敏感に異常を察知し始めている。   「……気のせいじゃないかもしれません。でも、今はまだ」
 僕は言葉を濁した。
 「証拠があります」と言いたい。「逃げてください」と言いたい。
 でも、その言葉が潮里さんへの引導になってしまう。

「そう。……貴方が言えないことがあるなら、無理には聞かないわ」
 松代さんは何かを察したように、優しく微笑んだ。
「でも、時計の針は止められても、時間は止められないのよ。いつか必ず、溜まったツケは回ってくるわ」

 彼女が去った後、僕は握りしめた拳の中で、じっとりと汗が滲むのを感じた。
 僕たちが沈黙している間にも、街は悲鳴を上げている。