YMO世代の気持ち -ノベル館-

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第125話:思考の迂回路、月曜日の地図

月曜日。
 朝、透子が血走った目で事務室から出てきた。
 「一晩中考えたわ。正面突破がダメなら、迂回するしかない」

 彼女は一枚の地図を広げた。再開発エリアだけでなく、隣接する古い住宅街も含めた広域地図だ。
「葛西の狙いは『再開発エリア内の工事』を止めさせないこと。そして『潮里さんという内部協力者』を封じること。……なら、土俵を変えればいい」

 彼女の指が、エリアの外側、僕たちの図書室や、松代さんの家がある地域を指した。
「水脈は繋がってる。工事現場の水を抜けば、その影響は必ず『外側』に出る。エリア外の井戸枯れや、家屋の傾きを調査するの」

「なるほど……!」
 僕は膝を打った。
 「内部告発(赤の糸)」を使うから人質を取られるのだ。
 外部で起きている「被害事実(白の糸)」だけを集めて、それを根拠に工事の差し止めを請求するなら、潮里さんの身元は関係ない。

「地味な作業よ。一軒一軒回って、井戸の水位を測り、壁のヒビ割れを探して回る。……『被害者の会』を結成するための、地道なドブ板選挙みたいなもんね」

 透子の目に、光が戻っていた。
 完全な解決策ではない。潮里さんを救える保証もない。
 けれど、「何もできない」という絶望からは抜け出せる。