YMO世代の気持ち -ノベル館-

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第129話:水晶のような鶏肉、涼やかな抵抗

金曜日。
 炎天下の調査と、監視のストレスで、僕も透子も限界だった。
 食欲なんてない。胃が鉛のように重い。

「……喉越しのいいものしか、受け付けないわね」
 透子が冷蔵庫から鶏のむね肉を取り出した。
「今夜は『水晶鶏(すいしょうどり)』よ。ツルッとしてて、見た目も涼しいやつ」

 鶏むね肉を薄く削ぎ切りにし、片栗粉を丁寧にまぶす。
 それを沸騰したお湯に入れ、浮き上がってきたら氷水に取る。
 たったそれだけだが、お湯から引き上げられた鶏肉は、片栗粉の膜でコーティングされ、まるで水晶のように透き通って輝いていた。

「綺麗だ……」
 思わず声が出る。
 皿に盛り、叩いた梅干しと大葉、ポン酢を合わせたタレをかける。

「食べてみて。魔法みたいだから」
 透子に促され、一切れ口に運ぶ。
 驚いた。パサパサしがちなむね肉が、驚くほど滑らかで、プルンとしている。噛むと冷たい肉の旨味が溢れ、梅の酸味が疲れた脳を突き抜ける。

「……美味しい。喉をするりと通っていく」
「片栗粉が旨味を閉じ込めて、喉越しを良くしてくれるの。どんなに酷い状況でも、これなら食べられるでしょ?」

 透子は少しだけ笑った。
 僕たちは、水晶のように透明で、でも決して溶けない強さを手に入れなければならない。
 黒い車に見張られようと、脅されようと、食べて、寝て、また歩く。
 それが、今の僕たちにできる唯一の、そして最大の抵抗だ。


湊の金曜レシピ:猛暑を乗り切る涼味「鶏むね肉の水晶鶏・梅しそだれ」

食欲不振の救世主。パサつく鶏むね肉が、片栗粉のコーティングで信じられないほど「つるん、ぷるん」とした食感に変わります。
見た目も涼しげで、夏の食卓の主役になれる一品です。

【材料】(2人分) * 鶏むね肉 … 1枚(300g) * 片栗粉 … 大さじ3〜4 * 酒 … 大さじ1 * 塩 … 小さじ1/2 * 砂糖 … 小さじ1/2(保水効果で柔らかくなります)

(梅しそだれ) * 梅干し … 2個(種を取って包丁で叩く) * 大葉 … 5枚(千切り) * ポン酢 … 大さじ3 * ごま油 … 小さじ1 * 白いりごま … 適量

【作り方】 1. 鶏むね肉は皮を取り、繊維を断つように一口大の削ぎ切りにする(厚さ5mm〜1cmくらい)。 2. ボウルに入れ、塩、砂糖、酒を揉み込む。 3. ここが重要! 片栗粉を一枚ずつ丁寧にまぶす。余分な粉は軽くはたく。 4. 鍋にたっぷりのお湯を沸かし、肉を重ならないように入れる。中火で2〜3分茹でる(浮いてきて、表面が透明になったらOK)。 5. ザルに上げず、直接氷水に取って急冷する。これで身が締まり、水晶のような透明感が出ます。 6. 水気をしっかり切り、器に盛る。混ぜ合わせた「梅しそだれ」をたっぷりかけて完成。

【湊のひと言】 「茹でる時はグラグラ沸騰させすぎないのがコツ。静かに茹でることで、片栗粉が剥がれず綺麗に仕上がります。わさび醤油や、ゴマだれで食べても美味しいですよ」