木曜日。盆の入り。
工事現場は、今日から三日間の一斉休暇に入った。
あれほど耳障りだった重機の音が消え、街には不気味なほどの静寂が満ちている。
しかし、その静けさが逆に恐ろしい。
普段なら聞こえない音が聞こえてくるからだ。
風の音。遠くの電車の音。そして、地面の底から響く、重苦しい唸り声のような音。
「……聞こえるわね」
閉館後の図書室で、透子が床に耳を当てている。
「ポンプは動いてる。でも、出力が不安定よ。まるで、抑えきれない何かが暴れているみたい」
明日の深夜二時。ポンプが止まる(あるいは止められる)。
その瞬間、何が起きるのか。
僕たちは、カメラと録音機材、そしてもしもの時のための懐中電灯を準備した。
それはまるで、台風の直撃を待つ夜のような緊張感だった。
「湊くん、今夜はしっかり食べておきなさい。明日は長い夜になるわ」
「食欲なんてないよ」
「だからこそ食べるの。胃袋が空っぽだと、恐怖心に食い尽くされるわよ」
透子はそう言って、キッチンへと向かった。
背中が頼もしい。
彼女がいなければ、僕はとっくにこの重圧に押し潰されていただろう。
青の糸が、震える僕の白の糸を、しっかりと支えてくれている。