日曜日。
昨夜の「実験」は、一時間ほどで終了したようだった。再びポンプが稼働し、噴き出した泥水は闇の中へと吸い込まれていった。
だが、僕たちの手元には、決定的な映像が残った。
朝、僕たちは録画した映像をモニターで確認していた。
そこには、ポンプが止まった瞬間に地盤が波打ち、資材置き場が泥に沈んでいく様子が鮮明に映っていた。
これは、誰の目にも明らかな「証拠」だ。
「……見て、ここ」
透子が画面の隅を指差す。
ポンプ室の近くに、人影が一瞬だけ映り込んでいた。作業着姿の若い男。彼が何やら操作盤をいじり、空を見上げて手を合わせているように見えた。
「レシートの彼ね。……彼もまた、怖かったのよ。このまま工事を続ければ何が起きるか、自分の目で確かめたかったんだわ」
お盆の最終日。送り火の日。
僕たちは、この映像データを慎重にバックアップした。
それは、昨夜現れた「大地の亡霊」を、デジタルの箱に封じ込める作業に似ていた。
「ねえ、透子。僕たちはすごい爆弾を手に入れてしまったね」
「そうね。でも、これは破壊するための爆弾じゃない。目を覚まさせるための目覚まし時計よ」
透子の顔には、クマができている。僕もひどい顔をしているだろう。
「……今の私たち、ゾンビ映画のエキストラみたいね」
「違いない。まずは寝よう。戦いは明日からだ」
夕方、送り火を焚いた。
煙が空へと昇っていく。
先祖の霊たちは帰っていくけれど、僕たちが手に入れた「真実(データ)」という遺骨は、この現世に留まり、明日からの武器となる。
静かな、熱い夜だった。