YMO世代の気持ち -ノベル館-

YMO世代の気持ちのサブブログです。

第143話:金曜日の茄子は、油を吸って強くなる

金曜日。決戦の夜。
 葛西が来るのは午後八時。その前に、僕たちは腹ごしらえをすることにした。
 緊張で胃が縮こまっているが、だからこそ、しっかりとした味のものを入れる必要がある。

「今夜は『茄子とピーマンの味噌炒め』よ」
 透子がフライパンに多めの油を引く。
 乱切りにした茄子を投入すると、ジュワァァッという威勢のいい音が響いた。
「茄子はね、油を吸えば吸うほど美味しくなるの。スポンジみたいに柔軟で、でも芯がある。今の私たちみたいね」

 ピーマンを加え、鮮やかな緑色が油で艶めく。
 そこに、味噌、砂糖、酒を合わせた特製ダレを一気に回し入れる。
 香ばしい味噌の焦げる匂いが、鼻腔をくすぐり、食欲中枢を直接叩き起こした。

「……うまい!」
 熱々の茄子を口に入れると、とろりとした食感と共に、濃厚な味噌の味が溢れ出した。
 白いご飯が進む。止まらない。
 ピーマンの苦味が、味噌の甘さを引き締めている。

「味噌は日本人のソウルフードよ。これを食べれば、どんな相手にも臆することはないわ」
 透子も、ご飯をおかわりしている。
 そうだ。僕たちはこの日常の味を守るために戦うんだ。
 高級料亭の懐石料理なんていらない。この茶色くて、油っぽくて、最高に温かいおかずがあればいい。

 完食し、食器を片付けた午後七時五十分。
 図書室の前に、黒い高級車が音もなく滑り込んできた。
 信号は青。
 さあ、話し合おうか。この街の未来について。


湊の金曜レシピ:ご飯が消える魔法「茄子とピーマンの甘辛味噌炒め」

シンプルですが、茄子のとろとろ感と味噌のコクがたまらない、夏のスタミナおかずです。
多めの油で茄子をコーティングするのが、色鮮やかに、そしてジューシーに仕上げるコツです。

【材料】(2人分) * 茄子 … 3本(乱切り) * ピーマン … 3個(乱切り) * 豚バラ肉(薄切り) … 100g(あればでOK。なくても美味しい) * サラダ油 … 大さじ3 * ごま油 … 小さじ1(仕上げ用)

(合わせ調味料) * 味噌 … 大さじ2 * 砂糖 … 大さじ1.5 * みりん … 大さじ1 * 酒 … 大さじ1 * 醤油 … 小さじ1 * すりおろし生姜 … 小さじ1

【作り方】 1. 茄子は乱切りにし、水にさらしてアクを抜いた後、キッチンペーパーでしっかりと水気を拭き取る(油ハネ防止と、味が薄まらないように)。 2. 合わせ調味料の材料を全て混ぜておく。 3. フライパンにサラダ油(大さじ2)を熱し、茄子を皮目から入れて中火で炒める。茄子が油を吸ってしんなりしたら、一度皿に取り出す。 4. 残りの油(大さじ1)を足し、豚肉とピーマンを炒める。 5. 肉に火が通ったら茄子を戻し入れ、合わせ調味料を加えて強火で手早く絡める。 6. 最後に香り付けのごま油を回しかけて完成。

【湊のひと言】 「茄子を一度取り出すのが面倒なら、肉→茄子→ピーマンの順で炒めてもOKですが、茄子の色が綺麗に残るのは『一度取り出し』方式です。翌日、冷えて味が染みたやつをご飯に乗せるのも最高です」