YMO世代の気持ち -ノベル館-

YMO世代の気持ちのサブブログです。

第146話:月曜日の古本市、記憶の掘り起こし

月曜日。
 僕たちは早速、動き出した。
 「工事反対」を叫ぶビラ配りはもうできない(それをすれば協定違反になる)。
 だが、「昔の街の写真を展示する」ことなら、誰にも止める権利はない。

 倉庫の奥から、先代の管理人が残したアルバムや、古地図を引っ張り出した。
 明治時代の赤煉瓦倉庫、大正時代の水路、昭和初期の賑わう市場。
 写真の中の街は、水と共生し、豊かだった。

「これを見て」
 僕が見つけた一枚の写真。昭和三十年代、今の建設予定地で子供たちがザリガニ釣りをしている風景だ。
「やっぱり、あそこは沼だったんだ。水が豊富で、生き物がたくさんいた」

「これを展示すれば、言葉で説明しなくても伝わるわ」
 透子が写真をパネルに並べていく。
「『ここは危ない地盤だ』と警告するより、『ここは水が愛した場所だった』と伝える方が、人の心に届くかもしれない」

 北風と太陽だ。
 恐怖で人を動かすのではなく、愛着で人の心を動かす。
 これは、僕たちなりの「グリーン・プロジェクト(綺麗な嘘)」への対抗策──「セピア・プロジェクト(懐かしい真実)」だ。

 作業をしていると、久しぶりにワクワクした気持ちが戻ってきた。
 僕たちは戦っているのではない。守り、伝えているのだ。
 その誇りが、膠着状態で腐りかけていた僕の背筋を、もう一度伸ばしてくれた。