YMO世代の気持ち -ノベル館-

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第83話:格下げの月曜日(白の糸)

月曜日の朝、最悪の報せが図書室に届いた。
 デベロッパーの男性が、先日の「十五度の笑顔」を完全に消し去り、冷酷な事務官のような顔で現れたのだ。

「湊さん、残念なお知らせです。文化財保護委員会からの最終的な判断が下りました。この建物、および屋根裏の資料については『歴史的連続性を証明するには不十分』とのことで、保存対象からの除外が決定しました。……来月には、解体準備のための囲いを作ります」
「……除外? 先日の調査員の方は、価値があると言っていました。なぜ、こんなに急に……」
「コストですよ、湊さん。保存を求める署名よりも、開発を遅らせることで生じる損失を危惧する声の方が大きかった。民主主義のルールに基づいた、合理的な決定です」

 合理的な決定。その言葉が、僕の足元を崩していく。
 先日の署名も、屋根裏の手紙も、潮里さんの警告も、すべては「経済的損失」という名の巨大な重機の前に、無力な砂利に過ぎなかった。

 夜、帰宅した透子にその話をすると、彼女はいつになく静かだった。
「……湊くん。実はね、今日、社内で聞いたの。あの除外決定、デベロッパーが裏で委員会に圧力をかけたって噂。……私の出しているコンセプト案が『保存』を前提にしすぎて、開発の邪魔だって判断されたみたい」

 彼女は震える手でグラスを握った。
「私の言葉が、結果的に図書室の死を早めちゃったの……? 湊くんを守ろうとしたのに、私がレバーを引いたことになっちゃったの?」

 窓の外、雨音に混じって、遠くで重機の咆哮が聞こえたような気がした。
 信号は真っ赤。けれど、世界は僕たちを置き去りにして、強引に走り出そうとしていた。