金曜日。激動の一週間が終わる。
精神的な疲労はピークに達していたが、不思議と体は熱を持っていた。知ってしまった責任が、僕の血を燃やしているのかもしれない。
「今夜は、戦うための食事にしましょう」
透子がキッチンで宣言した。
「夏バテも、迷いも、全部吹き飛ばすやつ」
彼女が取り出したのは、挽肉と、色鮮やかな夏野菜、そして鼻をくすぐる強烈なスパイスの瓶たち。
今夜は『夏野菜のキーマカレー』だ。
フライパンでスパイスを炒めると、クミンとコリアンダーの香りが爆発的に広がる。
挽肉を炒め、トマトの水分だけで煮詰めていく。水は一滴も使わない。凝縮された旨味の塊だ。
最後に、素揚げしたナスとピーマン、カボチャをトッピングする。
「……辛い! でも、止まらない!」
一口食べた瞬間、脳天に衝撃が走った。
その辛さは、今の僕たちの状況のようにヒリヒリするけれど、噛み締めるほどに野菜の甘みが追いかけてくる。
「スパイスはね、人を目覚めさせるのよ。ぼんやりしてる暇はないわ、管理人さん」
透子は額に汗を浮かべながら、ニカっと笑った。
そうだ。迷っている暇はない。
僕たちの手元には、最強の武器(図面)と、最強の仲間(潮里)がいる。
来週からは、反撃の狼煙を上げる。
口の中に残るスパイスの熱さが、僕の腹の底に火を点けた。
信号は、もうすぐ青に変わる。
湊の金曜レシピ:迷いを断ち切る「無水・夏野菜キーマカレー」
水を一滴も使わず、野菜の水分だけで作る濃厚なカレー。
スパイスの刺激とトマトの酸味が、停滞した心と体に喝を入れてくれます。
【材料】(2人分) * 合い挽き肉 … 200g * 玉ねぎ … 1個(みじん切り) * トマト … 2個(ざく切り) * ニンニク・生姜 … 各1片(みじん切り) * カレー粉 … 大さじ3 * ウスターソース … 大さじ1 * 塩・胡椒 … 適量 * トッピング用野菜(ナス、ピーマン、パプリカなど) … 適量 * 油 … 大さじ1
【作り方】 1. フライパンに油、ニンニク、生姜を入れて弱火で香りを出し、玉ねぎを透き通るまで炒める。 2. 挽肉を加えて色が変わるまで炒め、カレー粉を投入して粉っぽさがなくなるまで炒め合わせる(ここで香りを立たせる!)。 3. トマトを加え、蓋をして弱火で10分ほど煮込む。トマトの水分が出てきたら蓋を取り、好みの水分量になるまで煮詰める。 4. ウスターソース、塩胡椒で味を調える。 5. 別のフライパンでトッピング用の野菜を焼き色がつくまで焼く(揚げ焼きでもOK)。 6. ご飯にカレーをかけ、野菜を彩りよく乗せて完成。
【湊のひと言】 「ポイントは、最初にスパイスと肉をしっかり炒めること。水を使わないので、素材の味がダイレクトに伝わってきます。辛いのが好きな人は、チリペッパーを追加して、自分だけの『弾丸』を作ってみてください」