金曜日。決戦の日の夜。
深夜二時の「実験」に備えて、僕たちは早めの夕食を摂ることにした。
外は熱帯夜。台所に立つのも億劫な暑さだ。
「今夜は、火を使わずにいきましょう」
透子が取り出したのは、お中元で大量にもらったそうめんの束。
「またそうめん? 正直、もう飽きたんだけど……」
「ふふん。私のそうめんを甘く見ないで。今日は『イタリアン・トマトそうめん』よ」
ボウルに、角切りにしたトマト、ツナ缶、オリーブオイル、そして少量の麺つゆとおろしニンニクを入れる。
茹でて冷水で締めたそうめんを、そのソースに絡めるだけ。
仕上げに、たっぷりの黒胡椒と粉チーズを振る。
「……え、これがそうめん?」
一口食べて、目を見開いた。
トマトの酸味とオリーブオイルの香り、そこにニンニクのパンチが効いていて、まるで冷製カペッリーニのようだ。でも、麺つゆの出汁が隠し味になっていて、どこかホッとする和のテイストも残っている。
「美味しい! これなら、いくらでも入るよ」
「でしょ? 固定観念を捨てれば、そうめんだってイタリア人になれるの。……私たちも同じよ」
透子はフォークでそうめんを巻き取りながら、真剣な目で言った。
「図書室の管理人と、無職の元OL。そんな肩書きは捨てて、今夜は『探偵』になりきるのよ」
冷たくて、刺激的な味が、体に活力を注ぎ込んでいく。
時計の針は午後八時を回った。
あと六時間。
ポンプが止まる刻が迫っている。
湊の金曜レシピ:脱マンネリ「トマトとツナのイタリアンそうめん」
夏のお昼の定番そうめんも、オリーブオイルとトマトで和えれば、立派なディナーになります。
麺つゆ×オリーブオイルの組み合わせは、失敗知らずの黄金比です。
【材料】(2人分) * そうめん … 3束(150g) * トマト … 2個(1cm角に切る) * ツナ缶 … 1缶(油ごと使うのがポイント!) * 大葉(またはバジル) … 5枚 * オリーブオイル … 大さじ2 * 麺つゆ(3倍濃縮) … 大さじ2〜3 * おろしニンニク(チューブ) … 2cm * 黒胡椒 … たっぷり * 粉チーズ … お好みで
【作り方】
1. ボウルに、切ったトマト、ツナ缶(油ごと)、オリーブオイル、麺つゆ、ニンニクを入れてよく混ぜる。冷蔵庫で冷やしておくとなお良し。
2. そうめんを規定時間通りに茹で、冷水でしっかりと揉み洗いして水気を切る。
* ★こだわりポイント:水気はこれでもかというほど切ってください。味が薄まる原因になります。
3. ボウルにそうめんを入れ、ソースとしっかり和える。
4. 器に盛り、刻んだ大葉、黒胡椒、粉チーズを振って完成。
【湊のひと言】 「ツナ缶の油には旨味が詰まっているので、捨てずに使います。トマトから水分が出るので、食べる直前に和えるのがコツ。タバスコを数滴垂らすと、大人の味になりますよ」