月曜日。八月三十一日。
子供の頃、夏休みの宿題に追われて泣きそうになった日だ。
大人になった今、僕はもっと大きな宿題──この街の未来──を抱えて、汗を拭っている。
夕方から風が出てきた。
天気予報によれば、季節外れの大型台風が接近しているという。
湿った生暖かい風が、開け放った窓から図書室に入り込み、準備の整った写真パネルをカタカタと揺らす。
「明日から九月。そして展示会の初日ね」
透子が窓を閉めながら、空を見上げた。
雲の流れが速い。厚い灰色が、西の空から覆いかぶさろうとしている。
「台風か……。地盤が緩んでいる時に大雨が降ったら、どうなるんだろう」
僕の不安げな呟きに、透子は答えなかった。ただ、強く窓の鍵をかけただけだ。
答えなど、分かっているからだ。
水脈をいじられた土地に、天からの水が注がれる。それが何を意味するか。
「……嵐が来るわね」
それは気象の話であり、これからの僕たちの運命の話でもあった。
夏が終わる。
蝉の声が遠のき、代わりに風の唸り声が近づいてくる。
僕たちは電気を消し、闇に沈んだ図書室を見渡した。
壁に掛けられた古い写真の中の人々が、じっとこちらを見ている気がした。
「守れるか?」と問われているようだ。