YMO世代の気持ち -ノベル館-

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第26話:予報外れの雨

日曜日の昼下がり。天気予報は「快晴」を告げていたのに、空は突如として不機嫌な灰色に染まり、冷たい雨が降り出した。
 予定していたピクニックは中止。公園へ向かっていた人々が、恨めしそうに空を見上げながら、近くの軒下へと逃げ込んでいく。

「最悪。せっかく新しい服を着てきたのに」
 透子が、玄関で濡れた上着を脱ぎながら毒づいた。彼女にとって、予定が狂うことは、敗北と同義であるらしい。
「まあ、そう怒らないで。空が気まぐれなのは、僕たちが自然の一部であることを思い出させてくれているんだよ」
「そんな綺麗事、濡れたストッキングの前では無力よ」

 僕は彼女にタオルを渡し、熱いココアを淹れた。
 予定が狂う。それは、コントロールできないものに直面するということだ。
 現代の僕たちは、あらゆるものを予約し、管理し、最適化しようとする。けれど、たった一雨のせいで、その完璧な計画はもろくも崩れ去る。

「ねえ、湊くん。もし人生が全部、天気予報みたいに完璧に分かっていたら、もっと楽なのにね。いつ悲しいことが起きて、いつ誰と別れるか、全部降水確率で出てくれたらいいのに」
 透子がココアのカップを両手で包みながら、ぽつりと呟いた。
「……それは、楽かもしれないけれど、同時につまらないよ。雨が降るからこそ、雨上がりの虹に驚けるんだし、予定外の雨宿りで、思いがけない会話が生まれることもある」

「……雨宿りね。今の私たちも、そうなのかも」
 彼女は窓の外を眺めた。
 激しく叩きつける雨粒が、アスファルトの熱を奪っていく。
 完璧な日曜日ではなくなったけれど、こうして二人でココアを飲み、降り止まない雨を眺める時間は、予定表には決して書かれない、最高のご褒美のようにも思えた。
 雨は、僕たちから「活動」を奪う代わりに、「静寂」を届けてくれたのだ。